テスラは1/28、2020年Q4の決算発表を行いました。
ポイントは以下の3つ
②2021年の生産能力は105〜120万台に到達する見込み
③少なくとも新型モデルSは18650セルを使用
それでは決算報告書の内容と質疑応答を日本語で紹介します。
デリバリー台数
2020年4Qのデリバリー台数
モデルS、モデルXは18,966台(前年前期比-2.6%)モデル3、モデルYは161,701台(前年同期比+74.6%)となりました。モデル3・Yのデリバリーが増加した背景にはギガ上海の稼働、中国での爆発的な人気、細部にわたる改善による商品力アップが大きく貢献しています。
生産拠点
フリーモント
モデルS、モデルXの生産キャパシティが前四半期に比べ10,000台増強されています。新型S・Xの発表に伴い2020年末から年始にかけて生産ラインの改変を行い、生産効率の上昇が見込まれたと思われます。
新型S・Xでは新しいパワートレイン(バッテリーモジュール、バッテリーパック、ドライブユニット)まったく新しい内装、外装の一部更新、その他の改善が含まれます。生産は2021年Q1に再開され、時間の経過とともにフル生産体制に移行するとしています。
また、フリーモントでは顧客の需要を満たすために、一体型リアアンダーボディキャスティング(メガキャスティング)を用いてモデルYの生産を増やし続けています。
上海
ギガ上海でもモデルYの生産が開始し工場の稼働状況が大きく変化しました。
モデル3・Yの生産キャパシティは年間450,000台となり前四半期から200,000台もアップ。モデルYの生産ラインがまるまるプラスになった形です。ギガ上海でモデル3を生産開始した当初、年間150,000台でスタートしたことを考えると2022年前半にモデルYは年間300,000台規模にまで増強していることが考えられます。
また、ヨーロッパ、アジア、オセアニアへモデル3の輸出も開始されました。日本向けのモデル3はギガ上海製となる予定です。すでに納車待ちしている方には「LRW」で始まる車両識別番号(VIN)が知らされています。(2021年製は最初のLが変わる可能性あり)
ベルリン
2021年の操業開始を目指してモデルYのラインを建設中です。そしてなんとベルリンで予定されていたモデル3の生産計画が白紙に戻されています。今後もしばらくは輸入で対応していき、もっとコンパクトで安価な車両を大量生産するために計画を変更した可能性があります。
主要な各大陸に工場を設置することによって輸送コストと価格を下げ、爆発的な需要が起こり続けるとテスラは考えています。またこれによって車が生産されてからオーナーの元に届くまでの時間が大幅にカットされ、短い期間でより多くのデリバリーが可能となります。
コアテクノロジー
オートパイロットとFSD
テスラは2020年10月22日にアメリカで完全自動運転のベータ版をリリースしました。3ヶ月間にわたってベータテスターからのレポートを元に改善を積み重ね、システムはより賢くなっていきます。
2021年後半にはスーパーコンピューターDojo Ver1を完成させる予定。Dojoは車両からのビデオデータを処理し、ニューラルネットワークを非常に高速にトレーニングするように設計されています。
車両ソフトウェア
12月にはホリデーアップデートをリリースし、ユーザーインターフェースの大幅なアップデートが行われました。運転中でも助手席の人がソリティア、ポリトピアの戦いなどのゲームをプレイ出来るようになり、ますます普通の車ではなくなっています。
大きな話題になっているのは「BoomBox」という車両接近音をカスタマイズする機能。詳しくは下記記事を参照してください。
バッテリーとパワートレイン
モデルS、モデルXのバッテリーモジュールはこの8年間で大幅に進化し、バッテリーパックとモジュールが完全に再設計されました。さらに、モデル3、モデルYは冬場の航続距離を向上させるためのヒートポンプを全面的に採用しました。
モデルS、モデルXに設定されていた「パフォーマンス」は「プラッド」にというバージョンに置き換わりました。独自の高速・高出力ローターを搭載したトライモーターパワートレインを特徴とするモデルSプラッドは、0-60mphタイムが2.0秒以下、1/4マイル走行が9.3秒以下と、ブガッティ・シロンよりも高速。市販車としては史上最速の加速性能を誇ります。
エネルギー事業
エネルギーストレージ
2019年から2020年にかけて大幅に売上げが増加。1年間で3GWhを超えています(前年比+83%) この成長は、主にメガパックの人気によって推進されました。
住宅事業の成長に伴い、パワーウォールの需要も増加し続けています。 生産は順調で、今後数ヶ月でさらに供給を増やしていく予定です。2021年も同様のペースで成長を続けるために、製造設備側とサプライチェーン側の両方で生産能力を増強することを目指しています。
ソーラー
2020年に、ソーラー事業は205MWに増加し、前年比+18%。 この成長は製品の簡素化、コスト削減、業界をリードする価格設定など、ソーラーレトロフィット戦略の成果です。 設置チームを拡大すると同時に設置効率を向上させたため、ソーラールーフの展開拡大も大きく進展しました。
今後の見通し
デリバリー台数
テスラは可能な限り迅速に生産能力の拡大を計画しています。 少なくとも2030年までデリバリー台数の年間平均成長率は50%になると予想しており、工場完成のタイミングによってより多く成長する年も出て来るかもしれません。
テスラは2021年に前年比+50%以上の成長が起こると予想しています。 現段階でテスラの年間生産能力は105万台(フリーモント60万台・上海45万台)これに加えてベルリンとテキサスも2021年中にモデルYデリバリー開始を目標としているので、操業開始の時期にもよりますが+10万台程度は上積みされるかもしれません。さらにテスラセミのデリバリーも2021年に開始するとのこと。
成長率は機器容量、運用効率、およびサプライチェーンの安定性によって異なるとしています。
現金
テスラの現金残高が145億ドルから194億ドル(+33%)となり、めちゃくちゃ潤っています。日本円にすると約2兆円、これはトヨタのおよそ1/3(5.5兆円)、日産(2.1兆円)とほぼ同じ規模となっています。
製品ロードマップ、長期的な工場拡張計画、およびその他の費用を賄うのに十分な余裕があります。これだけの現金があれば保険事業をアメリカ以外でも展開したり、車を購入する際のファイナンス事業にも参入できるかもしれません。
決算まとめ
2020年はテスラにとって変革の年でした。予期せぬ世界的なパンデミックにもかかわらず、販売台数、収益性、キャッシュを大幅に増加させたことで、自動車業界のトレンドを上回る結果となりました。
2020年通年*の営業利益率は、業界をリードする6.3%を達成(従業員・経営者への株式報酬が17億ドルに増加したにもかかわらず)サプライチェーン、製造、物流、配送を含む全体のチームが、一丸となってやり遂げました。※同期間のトヨタの営業利益率は5.5%
*2019年10月〜2020年9月
また、製品の改善を継続し、長期的なロードマップを提示。中国でのモデル3販売台数を週5,000台以上に拡大し、ギガ上海が操業して一年でモデルY生産を開始しました。また、2020年にはフリーモントでもモデルYの生産を開始しています。
ベルリンとテキサスでは、バッテリーそのものがシャーシーの一部となる車両を2021年に生産開始する予定です。また、テスラのエンジニアリングチームは、FSD(完全自動運転)ソフトウェアの開発を大幅に進めており、オーナーへの限定リリースを行っています。
収益
2020年Q4の総売上高は前年同期比+46%となりました。これは主に車両デリバリー台数の大幅な増加とエネルギー事業の成長により達成。一方で、売れ行きがモデルS、Xから手頃な価格のモデル3、モデルYへとシフトし続けているため、車両平均販売価格は前年同期比11%低下しています。
2020年Q4の営業利益は前年同期比で改善し5億7,500万ドルとなり、営業利益率は5.4%となりました。
デリバリー台数の増加と規制クレジット収入の増加からのポジティブな影響は、平均車両価格の低下、株式報酬費用、サプライチェーンコストの追加、モデルS・Xのモデルチェンジ費用によって相殺されました。
質疑応答
Q)テスラからテスラに乗り換えた際、FSDの権利を移行できるか?
現時点でその予定はない。消費者も投資家もFSDのことを過小評価している。1~2ヶ月以内にFSDサブスクリプションを開始する予定。
Q)新型バッテリー開発の進捗状況は?
毎週歩留まりは改善されていっている。2022年には100GWh生産することを目標としている。
Q)2021年にレベル5の自動運転本当に達成できるの?
技術ロードマップとベータ版の改善を鑑みて今年中の実現に自信を持っている。少なくとも人間のドライバーより2~3倍は安全な運転が出来るようになる。自動運転実現に必要なラベリングと推論は写真データからビデオデータに移行している。これらを処理するDojoは世界最高のニューラルネットワークコンピュータになる。
Q)サービスに電話が繋がらないけどどうなってんの??
電話じゃなくてアプリで予約してもらうことを前提としている。
最高のサービスはサービスがないこと。サービスの頻度は過去2年で1/3に減少している。モバイルサービスは全体の40%以上を占め、修理の50%は2時間以内に終了している。アメリカでは10日以内に予約を取ることができる。我々はアプリによるサービスに投資している。
Q)自動運転の技術を他メーカーにライセンス販売する予定は?
他メーカーと議論は交わしているが、まずは完全自動運転の実現が先だ。この技術をテスラだけのものにするつもりはない。スーパーチャージャーも他メーカーが使えるようにする予定。
Q)中国での自動運転戦略はどうなってんの?
中国でFSDを買う人は全体の1~2%。他の国と比べると全然売れてない。でもだからこそ上手く機能させる必要があると考えてる。2021年後半には機能させたい。
Q)サイバートラックの開発状況は?2021年にデリバリーできる?
デザインは完了した。モデルYは6000トンのプレス機械を用いたがサイバートラックでは8000トンのプレス機械を使用する。運が良ければ2021年にデリバリーを開始できる。本格的な量産開始は2022年。
Q)各国における自動運転テストの認可ってどうなってる?
アメリカでテストをする場合ルールはあるが厳しい規制はない。ヨーロッパはまだレベル3止まり。中国では2021年後半にレベル4・5のテストが出来るかもしれない。
Q)2021年の規制クレジットについてどう考えてる?
長期的には規制クレジットによる売上は事業の重要なポイントにはならないし、それに頼った事業計画はしていない。
Q)2020年に増資で得た資金の使い道は?
主に負債の削減と工場への投資に充てている。生産キャパシティの最終的なゴールを見据えた計画的な投資が可能となっている。これは今まで出来なかったことだ。
サービスとスーパーチャージャーの拡充も大幅に加速していく。
Q)電気自動車バンは作る予定ある?
テスラはいつか電気自動車のバンを生産する。ただバッテリーがない。
Q)自動運転チップHW4の開発はどうなってる?
実際はソフトウェアの性能が追いついておらず、HW3の性能すら十分に活用していない。次世代のチップ性能は3倍向上し、高解像度カメラも採用する。しかしHW3で完全自動運転の実現に自信を持ってるので基本的にはソフトウェアの開発にウエイトを置く。
Q)持株会社「X」の傘下にテスラやスペースXをまとめるの?
まだ数年間はテスラのCEOとして働く。使命はまだ終わっておらず、持続可能なエネルギーへの加速にはまだ長い道のりがある。
現在、道路を走っている車のうち電気自動車の割合はまだごくわずかで、世界の総車両の1%未満。つまり、全世界の自動車の1%程度の割合で電気自動車が普及するには、まだまだ長い道のりがある。コスト競争力のある風力発電や太陽光発電、地熱発電の登場には目を見張るものがありるが、太陽光発電にはまだまだ大きな道のりがあります。そしてもちろん、大量の定置型バッテリーパックも必要。
私は今でもこの仕事に取り組むために気合を入れている。
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