7/23、テスラは2020年第2四半期の決算報告で純利益1億400万ドルの純利益を報告し、4四半期連続黒字を達成しました。
決算の内容と質疑応答を日本語で紹介します。
デリバリー台数
Model S,X | Model 3,Y | 合計 | |
2020年Q2 | 10,614 | 80,277 | 90,891 |
2020年Q1 | 12,230 | 76,266 | 88,496 |
2019年Q4 | 19,475 | 92,620 | 112,095 |
2019年Q3 | 17,483 | 79,703 | 97,186 |
2019年Q2 | 17,722 | 77,634 | 95,356 |
2019年Q1 | 12,091 | 50,928 | 63,019 |
テスラはカリフォルニア州からの要請により3/23から5月の中旬までフリーモント工場を停止していたにも関わらず、納車台数は90,891台を記録。早い時期に稼働再開していたギガ上海により助けられました。
利益率の高いモデルS、Xの納車は-13%となりましたが、中国でモデル3ロングレンジ後輪駆動の販売が4月から始まり、アメリカでモデルYのデリバリーが本格化した為、粗利益率(自動車販売)は25.4%となり、前四半期から0.1%ダウンで済みました。
生産拠点について
生産キャパシティ | 状態 | ||
フリーモント | モデルS,X | 90,000 | 稼働 |
モデル3,Y | 400,000 | 稼働 | |
上海 | モデル3 | 200,000 | 稼働 |
モデルY | – | 建設中 | |
ベルリン | モデル3 | – | 開発段階 |
モデルY | – | 建設中 | |
テキサス | サイバートラック | – | 開発段階 |
モデル3 | – | 開発段階 | |
モデルY | – | 開発段階 | |
テスラセミ | – | 開発段階 | |
カリフォルニア | ロードスター | – | 開発段階 |
テキサス
今回のカンファレンスコールでテキサス州オースティンに新しく工場建設されることが正式発表されました。
建設費用はおよそ10億ドル、広さは850ヘクタール(東京ドーム181個分)と超巨大。ギガファクトリーではなくテラファクトリーと呼ばれることになるかも知れません。
生産が予定されている車種はサイバートラック、セミ、及びアメリカ東部向けのモデルY、モデル3です。
最低でも5,000人の新規雇用が予定されており、工場の周囲では遊歩道、ハイキング、サイクリングができるスペースを設け一般人も立ち入れるようにするとのこと。
マスク
工場周囲には木々が茂り、鳥や蝶が舞い小川が流れるエコロジーな楽園になるだろう。
フリーモント
モデルYの生産ラインはコロナによる工場停止により2020年前半の約4ヶ月間のみ稼働。これは、同じ生産率に達するまでに9ヶ月以上かかった当初のモデル3の立ち上がりよりも大幅に速くなりました。
フリーモント工場に追加の機械を導入しており、モデル3、モデルYの生産能力は年間40万台から50万台に増加すると予想されます。
上海
画像:Tesla
モデル3は中国においてベストセラーのEVになるだけでなく、BMW 3シリーズやメルセデスCクラスなどの中型プレミアムセダンと競合しており、強い需要を受けています。
モデル3の低価格化(補助金や自動車税の前でも)、運用コストの削減、業界をリードする標準装備などを考えると驚くことではありません。
上海工場でのモデルYラインの建設は計画通りに進んでおり、2021年にデリバリーが予定されています。
ベルリン
画像:Tesla
欧州最大の市場であるドイツでは、ギガファクトリーベルリンの建設が進んでいます。広さは約300ヘクタール(東京ドーム64個分)
新しい工場を建設する際、効率・コスト・技術を向上させるために、工場と製品設計の検証を続けています。先に稼働している工場からの経験をもとに、さらなる構造改善を実施。
すでにアメリカから輸入されたモデル3が多く流通しているため、ギガベルリンではモデルYから生産を始める予定です。さらにイーロンマスクは投資家からの質問に回答し、バッテリー(セル)もギガベルリン内で生産することを明らかにしました。
コアテクノロジー
オートパイロットとFSD
テスラがリリースを進めている「信号機とストップサイン認識機能」は、交差点を走行する車両からのデータ収集が進むにつれ、より強固なものになってきています。
第2四半期より、FSD搭載車は安全と判断された場合に、交差点で停止またはドライバーの確認なしで通過出来るようになりました。最終的には、確認の必要性を完全に撤廃する予定です。
車両ソフトウェア
最初のモデルSを納車してから8年以上が経ちました。その間、100万台以上の車両に定期的にソフトウェアをアップデートしてきました。
テスラはブログやSNSからのフィードバックを確認し、オーナーが次にどのような機能を望んでいるかリサーチしているとのこと。
無線アップデートはテスラの戦略の一部として当初から行われてきたもので、機能性は向上し続けています。例えば、第2四半期にはインテリアカメラ、駐車時のサイドバックカメラを有効にし、ユーザーインターフェースを改善しました。
バッテリー&パワートレイン
内燃機関車からEVへの乗り換えを検討している人にとって、航続距離が重要な要素であることをテスラは知っています。航続距離を最大化するための取り組みを続けており、更新し続けています。
2020年7月には、EPAテスト済みの航続距離402マイルを達成したモデルSを発表し、市販EVとしては史上初となる航続距離400マイルを突破しました。
エネルギー事業
メガパック
メガパックは最近発売されたばかりで、今もなお拡大を続けていますが、第2四半期に初めて利益を計上しました。ストレージの導入量は、パワーウォールとメガパックに牽引されて、419 MWhまで増加。
オートビッダーはテスラが開発したクリーンエネルギー管理と収益化を支援するソフトウェア。資産管理とポートフォリオ最適化を提供するリアルタイムの取引および制御プラットフォーム。ビジネス目標とリスクに応じて収益を最大化することが出来る。
最近、このプラットフォームをヨーロッパで立ち上げ、アメリカとオーストラリアの取引所に加え、欧州電力取引所での取引を開始しています。
ソーラー
アメリカで家庭用ソーラーをさらに買いやすい価格にするとともに、効率性を高めたパネルを提供開始。
テスラのソーラーシステムは1ワットあたり1.49ドルで、業界の3分の1以下の価格になりました。カリフォルニア州で大規模なシステムを購入すると、約6年後には電気代の削減でシステムコストを相殺。また、最低価格保証と返金保証も導入しました。
テスラの新しい価格設定は、顧客がワンクリックで注文できる標準サイズを推奨するようになったことや、プロセスの自動化による顧客獲得コストの削減など、いくつかの改善によって可能になりました。
ソーラールーフの設置件数は、第1四半期から第2四半期にかけて約3倍増加。引き続き設置チームを拡大し、設置率の向上に努めています。
今後の見通し
自動車生産は以前の水準に戻ってきたが、今後の見通しは不明瞭とのこと。
2020年後半、世界の消費者心理がどのように変化していくのか。 今後も随時見極めを継続。どのような変化が起きても対応できるように「製品投資」「技術向上」「部品調達の現地化」を軸にし、運転資金の管理をしっかりと行うことが重要であるとしています。
生産量
コロナによる工場停止にもかかわらず、今年は50万台を超えるデリバリー能力を備えています。目標の達成はより困難になっていますが、2020年には50万台の納入を目標にしています。
キャッシュフロー
製品ロードマップや長期的な生産能力拡大計画、その他の費用を賄うための十分な流動性を確保する必要があります。
利益
12ヶ月間のGAAPベースの営業利益率は5%弱となりました。
営業利益率は今後も成長を続け、最終的にはキャパシティの拡大や部品調達の現地化が進行中であることから、業界をリードするレベルに達すると予想されています。
プロダクト
ギガベルリンとギガ上海では、引き続きモデルYの生産能力を増強しており、2021年には両拠点からのデリバリーを開始する予定。ギガテキサスの建設地も決定し、準備を進めています。テスラセミのデリバリーも2021年に開始されます。テスラは製品ロードマップへの大幅な投資を続けています。
質疑応答
Q)モデル3よりも安い車両作るの?ロードマップある?
具体的なロードマップは明らかにできないが、テスラが小型車両を作るのは合理的な考えだと思っている。しかしモデル3、モデルY、サイバートラックなどまだ長い道のりがある。
Q)FSDについて
完全自動運転こそが自動車市場最大の資産価値上昇となる。他のすべてが比較して小さいように見えるくらい世界を変える。エンターテイメントが益々重要となり、アプリストアも考えている。
現在、ドライバーアシストシステムは2.5Dで動いているが、今年後半に4D(四次元)のものをリリースする。信号機、停止、交差点などすべてをこなせる。
Q)工場の完全自動化について
工場に必要なエンジニアリングは製品自体よりもめちゃくちゃ多い。だが進歩はしている。おそらくギガ上海、ギガベルリン、ギガテキサスはバージョン2になる。
ギガベルリンで生産されるモデルYはテクノロジーがさらに進化する。
Q)オートビッダーはどのくらい破壊的なのか?
オートビッダーはエネルギー取引のオートパイロットのようなもの。
エネルギー分野の規模は自動車よりも大きく、Tesla EnergyはEV事業と同じくらいの規模になる可能性が高い。単独で5000億ドルのビジネスになる可能性がある。
持続可能エネルギー加速に向けてこの分野でもイノベーションを起こしていく。
Q)テスラ独自の保険について
現在はまだバージョン1の段階。テスラ保険にはデータの優位性があり、それによって保険サービスを提供することができる。年末までにテスラ保険を他の州にも拡大したいと考えている。
Q)工場による生産アプローチの違いについて
モデルYのマージンは改善しているが、まだモデル3よりも生産コストが高い。ギガ上海は部品の現地調達が進んでおり、そこで生産される自動車の全体的なコストに大きな違いをもたらしている。これはモデル3の国内での価格調整にも表れている。多くのサプライヤーが中国でのテスラのサポートに熱心。ベルリンでも同じことが言えるだろう。
Q)営業利益率とEV税額控除(補助金)の影響について
EV税額控除をあてにしていない。米国でのテスラ購入者はもう受け取れないにもかかわらず、販売は順調に推移している。
モデルS、モデルX、モデル3のような成熟した製品の製造コスト低下が続いている。FSDなどのソフトウェア製品や、テスラネットワークのような将来のサービスも、営業利益率に重要な役割を果たす可能性がある。今は規制上のクレジットの恩恵を受けているが、長期的にはそうはいかないだろう。
今、私を悩ませているのは、私たちの車が十分に手頃な価格ではないということ。我々はそれを修正する必要がある。収益性を維持しつつ、車を手頃な価格にするためバランスをとることが重要。
Q)テスラ車両の短期的な需要について
需要の問題は全くない。生産とサプライチェーンの確保が問題。
Q)ギガベルリンではバッテリーを輸入するのか?
現地でバッテリー(セル)生産を行う。
財務概要
単位は百万ドル
2020年Q1 | 2020年Q2 | QoQ | |
自動車関連の売上高 | 5132 | 5179 | 1% |
規制クレジット | 354 | 428 | 21% |
自動車総利益 | 1311 | 1317 | 0% |
自動車用粗利益率 | 25.50% | 25.40% | -12bp |
売上総利益 | 5985 | 6036 | 1% |
売上総利益 | 1234 | 1267 | 3% |
総GAAP粗利益率 | 20.60% | 21.00% | 37bp |
営業費用 | 951 | 940 | -1% |
営業利益 | 283 | 327 | 16% |
営業利益率 | 4.70% | 5.40% | 69bp |
EBITDA | 951 | 1209 | 27% |
EBITDAマージン | 15.90% | 20.00% | 414bp |
株主に帰属する当期純利益 GAAP | 16 | 104 | 550% |
株主に帰属する純利益 非GAAP | 227 | 451 | 99% |
希薄化後の株主に帰属するEPS GAAP | 0.08 | 0.50% | 525% |
希薄化後の株主に帰属するEPS 非GAAP | 1.14 | 2.18 | 91% |
営業活動によるキャッシュ・フロー | -440 | 964 | N/A |
設備投資額 | -455 | -546 | 20% |
フリーキャッシュフロー | -895 | 418 | N/A |
現金及び現金同等物 | 8080 | 8615 | 7% |
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